二人漫才とスタンドアップコメディとタイトルに書いたが、今回も漫画や映画の構成の話である。
日本のコメディ分野においては二人の人間がステージに立ってボケとツッコミに分かれて笑いを誘うスタイルの漫才の存在感が大きいが、一方世の中には一人でマイクの前に立って小噺を展開するスタンドアップコメディというスタイルのコメディ分野も存在する。
どちらも面白いものだが、スタンドアップコメディの大会に二人で乗り込んで行ったり、漫才の大会でソロ漫才を行うのはレギュレーション違反にはならないかもしれないが、主催側としても観客側としても必ずしも歓迎されるものでもないかもしれない。
日本の商業漫画と呼ばれる出版社主体の漫画の分野における数十ページの読み切り漫画という分野においてもこのような表現における制約があるのではないかと思った。先のコメディの例でいえば、どうも「笑いのジャンルや方向性自体は合っていたとしても、もっと大枠の枠自体の手法という部分で場にそぐわない」場合があるようだ、ということが経験的にわかってきた。
他の人は逆にあまりそういうことはないのか、あるいは逆に経験が浅いから教科書通りに進めるため、そのような「表現形式のずれ」のようなものにそもそも遭遇しないのか、が気になるところではある。
どういうことかというと、この「ツミノコ[si ]」という54ページの読み切りネームについて具体例を置いて紹介したい。
https://manga-no.com/works/104125254968c6666a4
「めっちゃ雑やな!」っていう驚きはあると思うが、これはこのまま某誌のweb掲載向け読み切りネーム(も想定して)作成し、この状態で某誌の編集氏に提出して打ち合わせに使ったドラフトそのものである。雑さについては目をつぶっていただきたい(※こんな雑な状態で打ち合わせするんだ!という資料にはなると思います)
この漫画のネームについて、まず特徴的なのは冒頭からキャラが二人ほぼ同時に出てきて駄弁っているところ。主人公とそれをサポートする友人ポジションのキャラがいきなり二人で出てきてそのまま自分たちの日常の会話をし続ける。この形式が読み切りとしてはかなり例外的らしい。
いきなり誰かの親しい日常会話を見せられることは、作品についてまったく前情報のない状態の初見の読者としてはとっつきにくい、ということらしい。
そんな…と思ってジャンプ+の正しい漫画の読み切り作品をいくつかクリックしたところ、判を押したように「冒頭に主人公が一人、モノローグ、自分がどういう人間なのかの説明(モノローグ)」から始まっていて、もしかしてこれが最近の(出版社運営の商業サイト掲載向けの)読み切り漫画としての「正解の型」なのかもしれないと思った。
自分が面白いと感じるがエンターテイメントとして一般受けしないだろうなというラインは個人的に心得ていて、例えばこの前観たアランルネの映画などは自分にとってはとても面白かったが同時にこれはだいぶ人を選ぶだろうなとも思っており、仮にそのような方向性のものを作ったとして商業漫画として出すつもりは毛頭ない。
二つ前に作成した、藤子F不二雄氏のSF短編集作品の構成をモチーフに作成したネーム「夢を叶える悪魔(79ページ)(※同サイトにあります)」についても、「キャラが弱い(魅力が薄い)」ということで没になった。これについては、自分でも読み切りの構成自体が古く、現代の主流の漫画作品の方向性ではないという自覚はあったので納得感はあった。
しかし、そういう観点からいうとこの作品「ツミノコ[si ]」はわりとベタなエンタメを踏襲していると思うのだ、変なオチにいきつくこともない。読者が想定している予定調和プラスαに落ち着くわりと普通の大衆受けの面白みに落ち着いたと思う。
しかし、今度は形式のずれを指摘された。
つまり「孤独だった誰かが誰かと出会う物語」を書くという「暗黙の型」がある場において、「(物語の開始時から)ある程度の仲であった二人が事件を機にもっとより深い相互理解を進める物語」というのは場違いなのではないかという認識を得るに至った。
おそらくこの原因の一つは商業漫画誌のサイト掲載の読み切り漫画という形式の特殊性によるところがあると思う。
アニメや映画の場合、予告編という形で少々の前情報を最初に提示することができる。つまり「登場人物、おおまかなその作品の方向性や空気感、テンポ感、声や掛け合い、言葉遣い、間合い」などがあらかじめ提示された状態で、それを了承した読者(視聴者)が改めて期待をもって内容を観に向かうのだ。
逆に商業漫画誌のサイト掲載の読み切り漫画の場合、基本的に読者の得られる前情報はトップページ(扉絵)とタイトルのみである。内容の方向性に対する手掛かりはほぼない。
とくにオールジャンル寄りの漫画レーベルになればなるほど読者はほぼ前情報がない状態でその作品に臨むことになる。
意外とこの情報の差が大きかったのではないかと思っている。

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